本学会では、これまで生命倫理や環境倫理、さらには宗教共同体や宗教者の公共圏への参与など、宗教と倫理の関係をめぐる様々な課題を幅広く取り扱ってきた。宗教的信念に基づく価値規範と、急速に変化する現代社会に立ち現れる価値観とは、決して対立するだけでなく、相互に補完的かつ生産的な関係を取り結ぶこともできる。2018年度は2017年度に引き続き、宗教と倫理の間の緊張関係と相互関係をあらためて問い直し、本学会の固有の役割を再認識するために、「宗教倫理」という学問的枠組みに光を当て、今後の展開のための方法論的基礎を築いていきたい。
宗教がそれぞれ独自の価値規範を持ち、倫理という語が多義的である以上、「宗教倫理」の考察に対しても様々なアプローチが可能であろう。「宗教倫理とは何か」を共通課題として、理論および実践の両面から議論が深まることを期待したい。