宗教と倫理の関係をめぐる問いは、宗教が一般社会の中で存在する以上、不可避的に立ち現れる根元的な問いとして、すでに長い歴史を持っている。宗教的信念が超越的・脱日常的な方向を指し示すとき、それは社会で共有されている価値規範との間に、独特な差異を生み出すことになる。それが宗教の存在意義の一つであることは言うまでもないが、同時に、宗教の生み出す価値が、社会の価値形成や倫理観にしばしば大きな影響を与えてきたという現実がある。社会の世俗化や宗教の多元化が世界的な規模で進行する今日にあっても、宗教と倫理との間には、絶えず問い直さなければならない緊張関係が存在している。しかし、科学やテクノロジーの急速な進展によって、人類は未曾有の価値混迷の時代に直面しており、既成宗教が旧来の価値観を一方的に振りかざすだけでは、到底その混迷を打開することはできない。過去の伝統を踏まえながら、宗教と倫理の関係を、近未来を見据え根本的に問い直さなければならないのである。
本学会は、そのような現代の課題を学問的に受けとめるために、以下に記すような目的を目指して設立された。