学会の活動

学術大会

第11回学術大会

「格差社会と人間の危機 - 宗教倫理と倫理学」 

日時
2010年10月2日(土)
場所
キャンパスプラザ京都 2F第1会議室(JR京都駅ビル駐車場西側)

 宗教倫理の諸相は宗教の社会参加や社会活動に見られ、貧困者支援や災害の救援現場でNPO団体の活動と重なる場面も報告されてきた。今回の学術大会では、視点を変えて、テーマを宗教倫理と倫理学とし、宗教倫理の根拠や意味を倫理学と対比して考えてみたい。本学会でも、一部の会員は生命倫理(学)に関わっているが、倫理学との交流は少ない。宗教倫理を問題とするには、倫理学の最近の動向と論点を知った上で、宗教倫理の問題点や課題を認識する必要があるだろう。

 宗教では、神・神々や仏法などの真理は非合理であり、世界観や人間観にも現実を超えた来世や死後の生が含まれている。宗教倫理はこれらの信仰に基づいている。神学・教義学の伝統をもたない神道のような民族宗教も、それぞれに人間観と世界観・自然観を有し、必ずしも宗教倫理と自覚されない仕方で、社会規範に影響を与えてきた。他方、キリスト教神学などは、宗教と倫理の関係を信仰と行為、自由意思と予定論、神の正義、原罪などとの関連でさまざまに議論してきた。現世否定や人間の無力を強調する立場では、一般に、社会への責任や倫理を重視しない。この立場も含めて、倫理の根拠や意味づけは宗教(各宗派や思想)によって異なっている。

 公開講演は、倫理学・哲学を専門とする品川哲彦氏(関西大学教授)による「価値多元社会における倫理、形而上学、宗教」である。20世紀の倫理学の動向を概観したうえで、生命や環境の倫理学とホロコースト以後の神を論じたヨナスを例に、形而上学や宗教と倫理学の関係が問われるだろう。パネルディスカッションでは、高田信良氏と小原克博氏によるコメントや質疑応答を通じて、倫理学と宗教や宗教倫理の関係あるいは距離が明らかになるだろう。格差社会や家族の崩壊によるひずみが顕在化する現代日本と世界において、倫理学と宗教倫理は何をなしうるのか、何をなすべく要請されているのかを考える機会にしたい。

 

 

プログラム

9:15 受付開始
9:30 開会

 

【午前】

<研究発表> 20分発表 10分質疑

9 :30 「ルーマニアに対するエリアーデの負い目―贖いとしてのエリアーデ宗教学―」 奥山史亮(北大)
10:00

「空間の倫理学」

斎藤嘉文

10:30

「神・命令・自律―神の命令倫理学の可能性と限界―」

山口尚(京大)

11:00‐11:15 <休憩>
11:15 

「滝澤哲学における資本主義社会の理解と批判」

元春智裕

11:45

「一神教の倫理的フレームワークについての考察─世俗主義をめぐって―」

小原克博(同志社大)

12:15

「社会的宗教と他界的宗教をつなぐ―ひとつの糸口としての死後生―」

津城寛文(筑波大)

12:45‐13:45

<昼食>

 

【午後】

<公開講演とパネルディスカッション>

13:45‐15:00 第1部 公開講演(13:45‐15:00)
講演題 : 「価値多元社会における倫理、形而上学、宗教」
講 師 : 品川哲彦(関西大学文学部教授)
15:00‐15:15 <休憩>
15:15-17:00

第2部 パネルディスカッション
パネリスト

  • 品川哲彦(講演者)
  • 高田信良(龍谷大学)
  • 小原克博(同志社大学)

司会 : 小田淑子(関西大学)

17:00-18:00

<会員総会>
終了後、記念写真撮影

18:30-20:30

<懇親会>
会場 : イタリコ(京都駅ビル・京都劇場2F)

 

 

講師紹介

品川哲彦氏(しながわ てつひこ)

関西大学文学部教授

 

 1957年生まれ。京都大学文学部、大学院で哲学を専攻し、フッサール現象学を研究。89年、和歌山県立医大に就任後、生命倫理学に研究領域を広げ、広島大学総合科学部(生命倫理学担当)を経て、1999年、関西大学に就任。哲学倫理学専修に属し、生命倫理や環境倫理に関して、倫理と倫理学の相違を強調し、倫理学の立場に立つ。最近では、応用倫理学そのものより、自律や正義といった倫理学の基本概念の考察に関心を移している。キャロル・ギリガンのケアの倫理と、ユダヤ人哲学者ハンス・ヨナスの責任原理の研究は著書『正義と境を接するもの―責任という原理とケアの倫理―』(ナカニシヤ出版、2007年)にまとめられた。ハンス・ヨーナス『アウシュヴィッツ以後の神』(法政大学出版局、2009年)を翻訳。倫理学は神を前提にしないが、規範の根拠として形而上学、超越をどう考えるかを問題にしている。

  教養科目や導入科目も担当し、論理的思考やレポート作成を厳しく指導している。読書好きで、日本文学にも造詣が深い。