学会の活動

学術大会

第17回学術大会

「現代社会における生命倫理と宗教」

日時
2016年10月9日(日)
場所
関西大学・千里山キャンパス 第2学舎2号館(C棟)2階C204教室

プログラム

9:30 受付開始
10:00 開会

 

【午前】

研究発表
司会:高田信良(龍谷大学)

10:00~10:30

奥山史亮(北海道科学大学)

20世紀初頭のイタリアとルーマニアにおける宗教研究と政治状況

10:40~11:10

小原克博(同志社大学)

脳神経倫理と宗教倫理の接点

11:20~11:50

小田淑子(関西大学)

日本の宗教土壌と宗教倫理

 

11:50~13:30 昼食

 

【午後】

公開講演・シンポジウム

13:30~14:30

公開講演(要旨下)

「赤ちゃんポスト研究の最前線―生命保護と権利擁護の狭間で―」

柏木恭典(千葉経済大学短期大学部こども学科准教授)

14:30~14:45 <休憩>
14:45~16:30

シンポジウム

パネリスト:
柏木恭典(講演者)
鮫島輝美(京都光華女子大学健康科学部看護学科講師)
竹内みちる(高齢者住宅研究所研究員)
岡野彩子(関西大学)
司会:堀内みどり(天理大学おやさと研究所)

16:35~16:45 写真撮影

 

16:50~17:50 会員総会
18:00~20:00 懇親会
於不二家食堂(第2学舎2号館[C棟]1階 学生食堂)

 

 

講演要旨

「赤ちゃんポスト研究の最前線 ―生命保護と権利擁護の狭間で―」

 

 2007年5月、熊本慈恵病院に、日本初の赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」が設置されました。今年で運用10年目に入っています。2016年3月までに、計125名の預け入れがありました。

 赤ちゃんポストという言葉は、「Babyklappe(ドイツ語で「赤ちゃんの窓」の意)」の訳語(意訳)であり、メディアの報道等を通じて、一般に知られるようになりました。

 Babyklappeは、もともとは2000年にドイツのハンブルク・アルトナ地区で生まれたものでした。これを考案したのは、私立の幼稚園や保育園を複数運営するユルゲン・モイズィッヒという教育学者でした。彼は、社会の片隅で誰にも相談できない妊婦らが遺棄や殺害しないように、とBabyklappeを自ら考え出しました。その後、キリスト教系の母子支援団体の人々を中心に、ドイツ全土にBabyklappeが設置されるようになりました。その数は総数で100を超えています。これまでに預け入れられた子どもの数は、少なくとも300人以上と考えられています(報告されている子どもの数のみ)。ドイツでは、このBabyklappeの他に、「匿名出産」と「内密出産」という選択肢があり、児童遺棄や嬰児殺しを防止するための努力が続けられています。

 日本でも、日々、児童遺棄や嬰児殺しが起こっています。その数は(母子心中を含めて)年間100件以上と言われています。また、児童虐待も深刻な問題となっており、児童相談所に寄せられる相談件数は年間8万件を超えています。

 このように、出産や子育て(あるいはDVや虐待等)に悩み、苦しみながらも、誰にも相談できない妊婦や母親がいます。こうした人たちのことを、ドイツでは「緊急下の女性」と呼んでいます。この緊急下の妊婦や母親に対して、私たちは何ができるでしょうか。どんな支援ができるでしょうか。また、この問題に対して、どのような議論が今後必要になってくるでしょうか。こうした点について、議論していきたいと思っています。